ジェンダー女性の生き方 第1号
写真のデンマーク女性たちはだれ?
2021年4月
まず、はじめに、ヘッダーの写真に写っている多くの女性たちをご紹介することから始めましょう。顔がフルに見えている人は21名ですが、オリジナル画像には、最後列にさらに21名の女性たちが並んでおり、総勢42名のデンマーク女性の集合写真です(2015年5月撮影)。どう見ても最前列中央に座っている赤いブレザーの女性がグループの中心人物であることがわかりますが、彼女は、ヘレ・トーニング・シュミッツ(Helle Thorning-Schmidt、1966年生まれ)で、デンマーク初の女性首相です(2011〜2015年)。
彼女は45歳で首相となり、この集合写真が撮影されたのは、シュミット内閣幕引き1か月前のことで、当時49歳でした。彼女は、首相になる前の10年間はデンマーク社会民主党の党首を務め、さらにその前の5年間はEU議会議員も務めていましたので、まさにバリバリの若きエリート女性政治家として大活躍した人と言えるでしょう。そして彼女は50歳で政界を退き、現在は国際舞台で重要ポストにつき、引き続き活躍しています(イギリス人国会議員と結婚。2児の母)。
さて彼女を囲んでいるさまざまな年齢層の女性たちですが、全員に共通することは、撮影時までのいずれかの時期に、大臣を経験した人たちであるということ。デンマークでは、左派・右派の政権交代がおおむね5〜10年スパンで起きているので、ここにいる元大臣たちの所属政党や大臣就任歴はまちまちです。そしてこれら歴代の女性大臣たちは、シュミッツ首相が主催した昼食会に出席した人で、実数はもっと多く、2016年までに69人のデンマーク女性が大臣を経験しており、その多くが複数の大臣ポストを歴任しています。
ではデンマーク初の女性大臣はいつごろ誕生したのでしょう。調べてみると、1924年に文部大臣となったニナ・バング(Nina Bang)が第一号で、彼女はデンマークだけでなく世界初の女性大臣です。しかし二人目の女性大臣が誕生したのは、それから23年後の1947年、第二次世界大戦後のことです。それ以降は、どの内閣にも必ず女性大臣がおり、2000年以降は、女性大臣の占める率は、約35%〜48%で推移しています。
デンマーク(世界)初の女性大臣ニナ・バング
近年世界のかなり多くの国に女性首相が輩出しており、現職だけでも14名いますが、その中でもノルディック諸国(ノルウェー・デンマーク・スウェーデン・フィンランド・アイスランド)は特に女性首相が多く、スウェーデンを除く4か国の首相が女性です。 デンマークの現在の首相は、メテ・フレデリクセン(Mette Frederiksen,1977年生まれ)という女性で、2019年6月総選挙で政権交代があり、42歳という若さで首相になりました。まだ首相歴は浅いですが、コロナ・パンデミックにおける対応では、迅速な決断力や適切な判断力を示し、多くの国民から高く支持・評価されています。 なお現在の女性大臣は、首相も含め総勢20名中7名(35%)で、決して多いとは言えませんが、社会/高齢者大臣(39歳)、子ども/学習大臣(44歳)、防衛大臣(40歳)、教育/研究大臣(38歳)、環境大臣(36歳)、文化/教会大臣(41歳)で、その平均年齢は40歳という若さ。私の娘世代の女性たちが、今デンマークの政治的重責を担っていることになります。
現在のデンマーク首相メテ・フレデリクセン
このように書いてくると、デンマークは、世界でも特に女性の地位が高い国のように思われるでしょう。事実、デンマークの多くの女性たちは、自立心が強く、「自分の人生を自分で切り開く」ことができ、いきいきしています。しかし、世界経済フォーラム(World Economic Forum)が毎年発表しているグローバル・ジェンダーギャップ指数(Global Gender Gap Index)最新レポートを見ると、他のノルディック諸国が1位から4位までを独占している(1位アイスランド、2位ノルウェー、3位フィンランド、4位スウェーデン)にもかかわらず、デンマークだけが14位に留まっています。その最大の原因は、女性の政治参画が男性1に対して0.421と、あまり高くないためです。若い女性が首相や大臣を務め、国会議員の約4割が女性であっても、まだまだ上には上があり、この現状に胡坐をかいているわけにはいきません。
ちなみに日本はどうかと言いますと、すでにご存じの方も多いと思いますが、ジェンダーギャップ指数は153か国中121位で、政治参画は、男性1に対して女性は0.049と極端に低いのが現状です。この現実を私たちはどう捉え、どうしなければならないのでしょうか。2020年6月に上梓した共著「デンマークの女性が輝いているわけ」(大月書店)でも取り上げましたが、このページでも、デンマークのジェンダーギャップに対する最新の取り組みや女性の生き方をご紹介するとともに、日本社会における女性の生き方についても考えてみたいと思います。

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